クラウドファンディングの苦い経験
2014年の年明け早々に、当時代表をしていたNPOでクラウドファンディング(CF)を行い、わずかな期間ながらも89名の方から総額150万円以上の支援を頂いた。とてもありがたく、今でも感謝の念に堪えないがとても苦しい気持ちを持っていたことを今でも覚えている。
何が辛かったかと言えば、あまり前向きでないことに対して支援を求めた事だろう。震災以降の経営悪化により事業の継続が難しくなった時に、純粋に助けて欲しいと縋る気持ちで始めたのだが、新しく何かにチャレンジしたいといった前向きなことならいざ知らず、このままでは駄目だから助けてくれというのは、結局のところ最後まで気持ちの整理がつかなかったように思う。
「~助けてください!」というタイトルが良くない・・・
その時のことについては、その時集まった支援を基にちゃんと継続できる体制を整え、以来多くの方に利用してもらえる民間図書館として現在も運営しているので、無論CFを行って良かったと思っているし、89人の想いにこれからも応え続けられるように努力していく。
しかし、NPOでは事業としてもCFサイトの運営を行い、自分でもいくつかのプロジェクトを実施してきたがあまり気持ちが入らず、ずっと一歩引いて見てきたと思う。
もう一度ちゃんとやろうと思った。
世の中では一定程度CFの活用事例が増え、認知度が随分と高くなったのではないかなと感じている。特にオンラインメディアではCFを評価する著名人も多く、一部の層にとってはとてもなじみのあるサービスになっているのかなと思う。
このまま避け続けるのも嫌だし、中途半端にやるのも気が滅入ってこの数年を過ごしてきたが、3か月ぐらい前にちばぎんざ図書館を本気で立て直したいと感じた時に、CFをもう一度ちゃんとやろうと思った。前回と同じようなスタート地点に立ちながら、別の途を見出す事ができたからだ。
そして現在、反省を活かし「ともかく前向きに」そして自分たちの事だけでなく「地域や社会のため」の取組みとして、ちばぎんざ図書館復活プロジェクトを現在行っている。
ふるさと納税がチャンスをつくる
過日、うちの役員がちばぎんざCFのことを地元商店街の方に説明をするのに、「ふるさと納税のように寄付を集め、それに対し返礼品を出すようなもの」という説明をしたところ、随分と理解が早かったと語っていた。
ちょっと話がそれるが、制度としてのふるさと納税には思うところがあるものの、制度が存続する以上は各自治体もいかに活かすかを考えなければならないと常々思い、私の関係する団体でも制度を活かした取り組みを地域の為にできないかとこの数年検討を続けている。2018年度には全国で約2割の人がふるさと納税を行ったとのデータもあり、利用も認知も確実に広がっていると感じる。
そしてCFについても、ふるさと納税の様な制度という説明をすることで、いままでは横文字のタイトルだけで説明を聞くことに難色を示していたような方にも話がしやすくなった。
さて、ふるさと納税についてここで説明をするつもりはないが、簡単に言えばふるさとを応援するための寄付を自治体にすることで、返礼品を受け取る事ができる。自治体はその歳入を公共事業に使う事ができる。
今回我々が行いたいのもまさにこの商店街をテーマにしたふるさと納税だ。
地域を応援するための寄付をCFでする事で、返礼品を受け取る事ができる。我々はその支援でちばぎんざ図書館復活に使う事ができる。ここでの返礼品はふるさと納税と同様に地域から広く集め、支援してくださる皆さんに選んでもらうこともできる。
一過性で終わらせない
ついつい返礼品は自分で用意できるものを考えてしまい、今まではその枠から出れずにいたが、ふるさと納税を参考に、地域活性の為のプロジェクトの返礼品なんだから地域から広く集めようと思ったら可能性が無限に広がった。
そしてこれは、性質上期限が区切られているCFというプラットフォーム以外でも活かせる事ができるはずだ。施設ができた後もちょっと形を変えれば、まさに地域活性の拠点として提供できるサービスにできるのではと感じている。
クラフトビールやフリマ出店、カレートーストや落花生ギフトなど提供してもらった返礼品
商店街活性を考えた時に、補助金をもらってイベントを行ったとしてもその一時に人が集まるだけで根本的な解決にはならない。人が集まるショッピングモールと人が集まらない商店街や施設の最大の違いは使いたい店があるか否かだ。
ららぽーとのような商業施設は人が集まるコンテンツ=店舗を常に探し、人気の落ちたコンテンツと入替をして常に新しい顧客を増やす努力を継続している。商店街でも同様の努力が必要だと強く感じる。空き店舗があるのであれば、まずは店舗を誘致するべきだし、それが多くの人に求められている店舗であればなお良い。
また、店舗を入れ替えるまではしなくとも、客足が落ちているにもかかわらずずっと同じ業態を続けていては、店舗力ひいては商店街力も落ちてしまう。店主にとっては提供したい価値も大事だが、求められる価値も提供していきたい。
そして、その価値を自ら落とすような事をしてはいけない。安売りをしたり、割引券で客数を延ばしてもそれは自らの価値を貶めるだけである。補助金で行うイベント同様に一時の達成感に心を奪われ、継続的な事業発展は遠のく。
コミュニティが人を集め価値を生む
いくつもの店舗が集まるから商店街となる。一つのお店でできる事なら何も集まらなくて良い。集まったのならば一人ではできない事をすべきだ。
今回、我々が取り組んでいるCFでも返礼品に、クラフトビールやコーヒー講座など僕らだけでは提供できない価値を地域の皆さんが提供をしてくれた。これは既存の商店会というコミュニティが無ければ難しかった。
商店会は店舗で作るコミュニティだが、ここの店舗にはお客さんやスタッフなどの小さなコミュニティが存在する。この小さな輪が少しずつ大きくなり、地域な中で少しずつ重なり合いながらつながってゆく。そんな商店街の活性ができたらと思う。
まずはその第一歩として、ちばぎんざ図書館を復活させます。皆さまのご支援を頂けたら幸いです。よろしくお願いします。
一般社団法人地域力研究所
代表理事 岡直樹