今なお停電が続いている地域が数多く残っており、復旧に向け日夜ご尽力されている多くの方に心より敬意を贈ります。
この度の9月9日に千葉県に上陸した台風15号の被害においては、誰しもが多くの事を感じたことと思いますし、また反省すべきことも多々あったかと思います。
私自身、まったく予想もしませんでしたが、昨年より取り組んでいる千葉市若葉区大宮台の空き家では、建物の破損はあまりなかったものの、家の随所で雨漏りにより水が入ってしまった事と、台風上陸時の9日(月)2時より翌々日11日(火)19時までの間停電となり、冷蔵庫の中身などは廃棄しました。また、考えればわかる事でしたが、一帯が停電となると電波の基地局も電気が無いようで、携帯などの通信も途絶え、今後の課題を多々感じたところです。
NPOの民間図書館は、習志野袖ケ浦にある蔵書を保管している倉庫が、強風により屋根がすべて飛ばされ全壊し、残念ながら所蔵していた12,000冊の蔵書のうち1万冊以上を廃棄せざるを得なくなりました。屋根の骨組みとなる鉄骨ごと強風で飛ばされたことを思えば、怪我をされた方もおらず、近隣の住宅・車輛に被害が及ばなかったことは不幸中の幸いでしたが、多くの方よりお寄せいただいた寄贈の蔵書を大量に廃棄せざるをえなくなったことは断腸の思いです。
未だ電気や水道が使えず困難な生活を余儀なくされている方が多くおられる中、解決の目途が見えないときに、この様な文章を書いている事も申し訳なく思う所ではありますが、この台風上陸からの一週間で強く感じたことが2つあります。
ひとつ目はいかに我々の生活が電気に頼り切っていたのかという事です。昨年も千葉で台風の被害が出ました。その際は塩害による電気系統の故障や発火が相次ぎ、鉄道を中心に大きな混乱が起きました。今回は公共交通だけでなく、生命維持の根源ともいえる水道が止まりました。
東日本の震災と計画停電以降、省エネが盛んに叫ばれ各種家電の性能は日々向上しています。電力の自由化や再生可能エネルギーの普及も進み、発電と送電のあり方も多少は変わりつつあるのかもしれません。今回の台風被害はここからさらに一歩、電気のあり方を考えるきっかけになるでしょう。2017年に公開された「サバイバルファミリー」という映画では、突如電気が消滅した日本を描いていましたが、当時は面白く観る事ができた映画も、今は同じ気持ちでは見ることができません。
もう一つは情報のあり方です。上陸前夜、今度の台風はとても危険だと様々なメディアで放送されていました。しかし、どれだけの人がこの危険度を真剣に受け止めていたでしょうか?私自身は、せいぜいいつもより強い台風がきて夜中うるさいんだろうな、といった程度でしか考えていませんでした。正しい情報を受取り、正確に理解する事はとても難しいことです。
上陸した月曜の日中、テレビでは混乱する電車網と、JR津田沼駅の長い行列を取り上げていました。正午も過ぎて何時間待ってでも都内の会社に行かなければいけない人の列を不思議な気持ちで眺めると同時に、停電が解消されない地域が多くあると人づてに聞きながら、壊れた倉庫の片付けを延々としていました。この間、我が船橋市においては午後に繰り下げた市議会定例会を行っていたようです。もしその時により正確な情報、公共交通機関の復旧状況や市内の被害状況など、を得ていたら、はたしてみなさん同じ行動をとったのでしょうか?
今回の様に携帯電話も使えずテレビも映らない中で、いかに情報を得るか?様々な媒体から得た情報を正しく認識し活用する事ができるか?情報リテラシーが問われます。
令和元年9月20日
季刊・情報ステーション 編集主幹 岡直樹